【雑文】自動車学校 〜恐怖の路上教習〜

昨日のブログで少し触れた教習所の話。

 

okamonnu.hatenablog.com

 

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私が通っていた教習所では、ゲームセンターのマリオカート頭文字Dのような、実演型運転ゲームみたいなのがあり(どこでもあるんかな)突然飛び出してくる子供や対向車などと事故らないように運転する、シュミレーター教習なるものがあった。

私もそれを体験したが、予想もしない場所から凄い勢いで子供が飛び出してきたり、対向車がカーブを曲がりきれずにこちらにはみ出してきたりして、まあまあ難しかったものの、なんとか事故を起こさずにクリアできた。

 

その授業の後は路上教習がセットになっており、3人グループで交代しながら、他の受講生の運転の良かったところと悪かったところを言い合う、なんとも気まずい授業が組み込まれていた。

 

私のグループは、なんらかの事情で免許を失効してしまい、再取得のためにもう一度教習所に通っている訳ありおじさんと、ベトナムバングラデシュかその辺りにから来て日本語を勉強中らしい、グェンさんという30代くらいの男性の、非常に濃いメンツであった。

 

路上に出る前に、教官から「先ほどのシュミレーションの結果はどうでしたか?事故は回避できたでしょうか?」と聞かれ、私と訳ありおじさんは、無事故でクリアできたと答えた一方で、グェンさんは申し訳なさそうに「あの…わたし、ふたり、ヒキマシタ…」と答えていた。

教官は「そうですか。あのシュミレーションはかなり難しく作っていますからね。こうならないように、路上では細心の注意を払って運転していけば大丈夫です」と優しくグェンさんを励ました。

 

まずはお手本として、訳ありおじさんが運転し路上に出る。以前は乗っていただけあって、とても上手だった。私たちにも物腰が柔らかく、人柄も良さそうなおじさんだったが、一体何をしでかして免許を失効してしまったのか。ただ更新に行き忘れただけであってほしいが、尋ねる勇気はなかった。

 

続いて私の番になり、特筆する出来事なく終了。そして、ラストはグェンさんの運転である。

グェンさんはブレーキとアクセルの踏み方があまり上手ではなく、急停車急発進を繰り返し、その都度教官に注意されていた。しかし、日本語があまり聞き取れていないようで「スミマセン、スミマセン…」と謝るばかりで改善される気配は見られなかった。

私は前後に激しく動いたり止まったりする教習車の後部座席で、何度もガックンガックンとGを受けながら、自分も脱輪して一度仮免に落ちたことを棚に上げて、この人よく仮免受かったなと思っていた。

 

「じゃあグェンさん、次の信号を右折してください。右ですよ、右。ターンライトです」と教官がなるべく伝わるようにグェンさんに話しかける。しかし、赤信号の交差点に差し掛かろうとしたとき、グェンさんは右折レーンに行かず、直進レーンに入ろうとする。

 

「グェンさん、違いますよ!右ですよ!ライト!…あーでももう直進レーンに入っちゃったんでこのまま真っ直ぐいきま」教官が話している途中で指示器も出さずに急に右にハンドルを切るグェンさん。すかさずブレーキを踏む教官。急カーブ急ブレーキに身体を大きく揺さぶられるおじさんと、慣性の法則によりドアで頭を打つ私。クラクションを鳴らす後続車。刹那2秒ほどの出来事だったが、全てがスローモーションに感じた。

(補足…教習車には運転席の他に、助手席に座る教官の足元にもブレーキが付いている)

 

「スミマセン、スミマセン…ワカラナイ。日本語、運転、ドッチモワカラナイ…!!!」

グェンさん魂の叫びが車内に響く。そうやんな、日本語解ってても運転難しいもん。そりゃ仕方ない。しかしこの状態でどうやって仮免許取得したんやこの人は?なんで路上に出れてるんや?そういやさっきのシュミレーションでも2人轢いてたぞ?大丈夫かここの教習所は。

 

結局教官が横からハンドルを切り、無理やり右折レーンに入れてもらい、なんとか教習所に帰ってきた。教室に移動して、この濃いメンバーの反省会の時間が始まった。

 

「みなさんそれぞれの運転のよかった点、悪かった点を一人ずつ発表してください」と教官が言ったが、グェンさんの褒めどころが見つからないぞ…どうしよう…

悩みあぐねた結果「言葉のわからない異国の地で、頑張って自動車学校に通ってるガッツがすごい」と運転には全く関係ない心意気を誉めてしまったが、教官は私の心情を察しているらしく、特にツッコまれることはなく終わった。

 

それから卒業までに、おじさんとは何度か同じ授業を受けたことはあったが、グェンさんを見かけることはなかった。彼は無事に卒業できたのだろうか…

 

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