今週のお題「ゾッとした話」
前編はこちら
電気が付いてからは特に気にすることもなく、就寝時間となった。15人ほどいたクラスメイトは5人ずつグループを組み、コテージ内の三つの部屋に分かれて就寝する。私は先ほど一緒に着いてきてくれた友達たちと同じ部屋で眠ることになった。
みんなで他愛のない話をして、同じ部屋の全員が微睡みかけた頃、部屋のドアをノックする音が聞こえる。
「なぁなぁ、私達もこっちの部屋で寝ていい?」
隣の部屋にいたクラスメイト達が、私達のいる部屋に入ってきた。心なしか声に元気がない。隣の部屋は夕食後、私達がコテージに戻り談笑していると突然電気が消えた部屋だった。
「私らの部屋、さっきからずっと男の人がお経読んでる声が聞こえるねん。怖くて眠られへん」
中には怖くて泣いている子もいた。私達のいる部屋は決して広くなかったが、隣の部屋の子達も一緒に寝ることになった。
あの部屋には何かあるんだろうか。
そのままぎゅうぎゅうで眠り、朝になった。お経が聞こえた部屋ではなく、三つあるうちのもう一つの部屋で眠っていた子に話を聞くと、特に何も変わったことはなかったらしい。更に件の部屋が気味悪く感じた。
午前中も島で活動をし、いよいよ帰る時間になった。各々コテージに戻り、荷物を持って指定された場所に時間以内に集合しなければならないが、班長の私は最後まで部屋に残り、各部屋の窓の戸締まりを確認して最後に鍵をかけて出なければいけなかった。まだ明るい時間とはいえ、昨日色々あったあの部屋にまた入るのは嫌だった。
クラスメイトがみんな部屋を出ていくのを見届け、一部屋ずつ窓がきちんと施錠されているのを確認する。
最後に件の部屋に入ると、明らかにそこだけ異様に薄暗くて重い空気が漂っていた。
「うわ、いややなぁ…」と思いながら窓を確認した瞬間
ガッ!!!!
誰かに足首を掴まれた。
足元を見ると何もない。ただ痛いくらいに強い力で、金縛りのように下半身が動かない。怖い。掴まれているのも怖いし、この不気味な部屋で動けなくなるのももっと怖い。ほんで幽霊かなんか知らんけど、こいつ私になんの恨みがあるねん。こちとら班長やぞ。なんやねん班長て。面倒くさい役割押し付けやがって。なんで私一人で戸締まりせなあかんねん。
いつの間にか恐怖から、何故か自分が一人で面倒くさい役割をやってることに憤りを感じてきて、みるみるエネルギーが湧いてきた。
「なんやお前!!痛いねん!!離せ!!!」
まさかの見えない相手にブチ切れムーブ。その瞬間、フッと足が軽くなり、私の足を掴んでいたなにかが離れていったのがわかった。霊だがなんだか知らないが、驚かそうとした相手にこんなにブチギレられるとは思ってもいなかったはず。
なんとか部屋を脱出し、コテージの鍵を締めて集合場所へ戻る。なんで私一人で戸締まりしてたんだろう。誰かに付いていてもらえばよかった。
それにしてもあの部屋は一体何だったんだろう。停電はただの電気トラブルで、あとは私やクラスメイトの気のせいかもしれない。色々あったけど何も見てないし。何かがいた証拠もないし。
みんなと合流し、フェリーに乗る。フェリーの中で友達に声を掛けられた。
「足首のところ、青いアザできてるけど大丈夫?」