夫が夜勤でいない夜。
夕方、息子と二人でリビングでEテレを観ていると、全然怖いシーンなどないのに、突然泣きそうな顔をしながら私に抱きついてきた息子。
黙って私の胸に顔を埋めて、離れようとしない。
「どうしたん〜?楽しい歌やん〜!」と息子を抱きしめていると、
「おばけ、こわい、こわい」
と、確かにそう言った。
え、おばけ?
私は子供の頃から何度かそれっぽいものを見たりしてきたし、一人暮らしをしていた築45年のアパートは、誰もいない場所の床がギシギシいったり、風呂のドアが勝手に開いたり、深夜に何故かパソコンが砂嵐になったりと怪奇現象が多発する物件だったので、おばけとか幽霊はあまり怖くない。ホラー映画とか生きてる人間の方がよっぽど怖い。
だからと言って自ら心霊スポットに遊び半分で行くことは絶対しないけどね。あんなんあそこで暮らしてるおばけ側からしたら迷惑極まりない。
それは置いといて、遂に我が家にもおばけが来たかー!とちょっとワクワクしてしまった。特に人に恨まれることも、霊に祟られるような罰当たりなこともしてないし、突然うちにやってくるとしたらどんなおばけなんだろ。
とは言え息子が怖がっているなら、出ていってもらう他ない。なんせここは引っ越してきたばかりの大事なマイホーム。いくら私の目には見えないとは言え、不法侵入は困る。
「アレクサ、ゴーストバスターズかけて」
息子を安心させるためにアレクサでゴーストバスターズのテーマを流しながら、MCハマーのような動きで部屋中を練り歩く。
「ほら!見て!こんなアホみたいな母ちゃんがいる家、オバケも嫌がって出ていくで〜」
さっきまで何かに怯えていた息子も、私の動きと陽気な音楽を聴いて元気を取り戻し、笑いながら一緒に踊り出す。おばけが本当にいたかどうかはわからないが、辛気臭くしないことがおばけに居座られない最善策なのではないかと思っている。
昔インターネットで話題になった除霊法がある。素っ裸になり、「びっくりするほどユートピア!」と言いながら自分のお尻をぺちぺち叩いて部屋中を練り歩く。あまりのアホくささに霊が恐れをなして家から出ていくらしいが、被験者自身も人間の尊厳を失ってしまいそうなある意味危険な行為だ。流石に子供の前でこれをするわけにはいかない。幼少期に母親のこんな姿を見せつけられたら、おばけを見るよりもトラウマになること間違いなし。
それからどうしてもおかしな気を感じたら部屋の奥から塩を撒き、玄関に向かって掃き出す、ということもしたことがある。以前母と二人で住んでいた家も、ある時間になると玄関に設置している人感センサーのライトが誰もいないのに毎晩光るようになったが、このやり方で塩を撒いたところ、その日から怪現象はぱったりなくなった。
霊的なものを信じていない人にとっては「ずっと何言ってんだ」状態かもしれないが、姿は見えなくても実際になにかを感じる人はいる。私もそうだし、母や祖母もそういうものを見ていたそうなので、息子もなにか感じる人なのかもしれない。
とにかくおばけにしても何にしても、恐怖を感じたときは、楽しい音楽を流したりお笑いを見たりして気分転換をするに限る。これを読んでる貴方も、ホラー映画などを観て夜トイレに行けなくなってしまった時には、島田珠代ねえさんのギャグとかを全力でやりながらトイレに向かえばいいと思う。恐怖に打ち勝つには明るく楽しい気分でいることが一番な気がする。パンティーテックス。